Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

ここも、前の道と変わらない嶮しさです。

しかし、降りても降りても羊腸として尽きないところは、さっきの行き止まりと違って、こんどこそ見込みがある。

「おう、だいぶ谷間らしくなって来たな」

と、日本左衛門は笠を上げて、紺碧な空を井戸の底からのぞくように見上げました。

「水音が近いぜ」

「星影川だ」

「ううム、さすがに此処まで来るとゾッとするように涼しい……。お、兄弟、河があった、河が……」

「は、は、は、は。おめえのような悪党も、こういう所を迷い歩くと、子供みてえになるから可笑しい」

「なぜ?」

「何も、河があったッて、そう珍しいことじゃあるめえ」

笑いながらその渓流の水層岩に身を立てた時、初めて、小仏全山の緑翠をかしらにあつめ、涼風冠としていただいたかの如き清澄さをおぼえました。

「さあて、これからまた、今度はこの上流へ七、八町逆もどりだな」

「そうだ。しかし、帯はすぐ見つかるだろう」

「やはり、ああしておいてよかったな」

「や、兄貴!」

「なんだ」

「だれか向う岸へ来る様子じゃねえか」

と、金右衛門が小腰をかがめて、渓流の対岸に見える檜の蔭を透かすように指さします、

ここに道がある以上、ここを通る人のあることも当然ですが、暗緑な谷の檜林のなかに、それが、あざやかに白い人影なので彼がたれか来ると、指さしたのは、すでに、何者だろう