Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
しかし、彼のごとき複雑でない、また彼の如く横着でない、単純一徹な金吾には、対岸の哄笑に対して、同じような大声の笑いを投げ返してやることすら出来ないのでした。
まだ、衝動の紅潮を、耳のあたりに残しながら、ことば鋭く、
「ぬかすなッ、日本左衛門」
と、足をあげて蹴らんばかりの語勢です。
「人を愚弄した今の一言、いつか、千鳥ヶ浜で会った時は、むなしく汝を見のがしたが、今日こそ、よい所で会ったというもの、うぬ、そこを去るなよ」
「なに、この激流を渡って来るのか?」
「ちッ! 待て待て」
つとめて、自制しながら、金吾はいつか吾ながら見苦しく急きこんで、何処か、飛び越えてゆく足懸りの石はないか、下流に丸木橋でもないか、と地だんだ踏みながら目を配っている。
「金吾! 何をキョロキョロしているのだ。越えて来るなら早く来い、こっちは用事のある体、悠長に貴様が思案をつけるまで待ち込んでいるわけには行かぬぞ。……おい金右衛門、ボツボツ上流へ出かけようじゃねえか」
「ばか野郎め、向う河岸で腕まくりをしていやがる。あはははは、飛んだいい木偶人形だ」
毒口を叩きながら、金右衛門も野袴の塵をはたいて立ちかけます。