Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
そして、これはほんの少しですけれども礼のおしるし、納めておいて下さいな」
と、紙にひねッた小粒銀を、明りの届くところへ置きました。
最前から障子をしめきって、中でシンとしていたのは、手廻りの物、髪粧い、何かの身仕度を小まめにととのえていたものでしょう、あとは、草履の紐を結ぶばかりに、すっかり身ごしらえを済ましている。
お蝶です。
帯揚のうしろか、袂の中か、何処かにあの般若の仮面を呑んでいるお蝶です。
これから人も怪鳥の往来も絶えようという小仏の夜に向って、虫も殺さぬような小娘が、ただ一人で、この峠の絶頂を立とうというのですから、一方は、暫くあっけにとられました。
けれど、質朴な老婆心が、おいそれと、それをかんたんに送り出すものではなく、まあ御飯を食べて――と無理に坐り直させる。
そして、懇々ということには、この山越えが昼でも男の足に骨の折れること。また、夜に入って若い女がこうされた、ああされた実例など、お蝶を断念させようとして、いつまでも、家の外へ出すことを肯んじません。
元より、そんなことは、百も二百もお蝶は承知しておりますが、前に、口から出まかせな口実を言った手前もあるので、素直に俯向いて、聞くだけのことを聞くよりほかにない。