Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
江戸を離れた後、久しくふれない町の繁昌ぶりも、今夜だけは、お蝶にうるさい騒音としか響きませんし、また、往来の都会人の身なりと見くらべて、自分の装いをさびしく思う心も起きません。
ただ、注意するともなく、自然に目にはいったのは、
(江戸名題曲独楽娘一座嵐粂吉)
という辻ビラです。
行く先々にはりつけてあるので、いやでもそのビラが目につきます。ことに、江戸という字がなつかしい。やはりここは甲府です。お蝶にも旅の空のたよりない意識がどこかにひそんでいます。
東両国で見たあの曲独楽かしら、それとも、浅草の地内に興行していたあれかしら。
切支丹屋敷にいたころは、よく父の二官をだまして、両国や浅草のいろいろな小屋をのぞいて歩いたが……
そんな事を考え出しました。
そして途方に暮れて来た彼女の心が、無意識に柳町の小屋場の灯に吸われてゆく。
すると、ちょうど小屋場の二つ目の横丁から、スタスタと追いかけて来た見なれぬ男が、お蝶を追い越して振りかえったり、わざとおくれて小半町ついて歩いていたかと思いますと、人通りのすきを見て、
「お蝶さん」
と、見事に彼女の名をさしました。