Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
くずし紋は芸人のよくすること、その芸人社会のものの目で見れば、思う人の紋に心意気を似よせた粋ごとに相違ないのでありますが、ここに立った相良金吾の身になってみますと、それは怖ろしい皮肉と恥かしめであるほか何ものでもありません。
――紋まで片輪になった!
こうもため息が出たでしょう。
家紋は武士がもっとも尊ぶものでした。それが、いまわしい女の、しかも蓆囲いの楽屋の手道具に、片輪のようにくずされて、いっぱいになって散らかっている!
ああ紋まで――、その紋の前には、この金吾というものの生涯が、あの女のために、拭われない不具者にさせられているのだ。
人の居ない楽屋と片輪の紋。――泣いて少しでも気のはれるものなら、ここは、金吾が泣くにもっともふさわしい場所ではないか――と金吾がみずから身を嘲りました。
が――俄然として立つと、
「愚痴だッ」
とばかり、かれの足は、あたりにのめのめとしている片輪の鷹の羽を、片っぱしから蹴飛ばし初めました。
衣裳箱、湯呑、鏡台、つづら、そこらに紋のついてあるものは、みな彼の足の先に踊って、道化役者のようにとんぼを打つ。
不快はいよいよ不快を加えてきます。