Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
あとは心得顔に代官原を横切って彼方の土手へあがりました。
その後です。
声のわるいキリギリスが人の汗を誘うようにどこかでなきだしたかと思うと、代官屋敷の土塀のかげから、虫の音を踏み消して、
「あぶねえ、あぶねえ」
と馬春堂先生が、呟きながら出て来ました。
そのあぶないところを、首尾よくのがれ得たのにお調子づいて、
「おい伊兵衛や、もう大丈夫だよ。ほれ向うへ行っちゃった」
手を上げて、うしろを招いていると、べつな方から抜け出した伊兵衛は、もう彼より先の方をスタスタと歩いていて、
「オイお父っさん、どこを向いてだれを呼んでいるんだよ。こっちだこっちだ」
あべこべに声をかけられて、馬春堂はアタフタと追いかけながら、
「いつもお前は逃げ足が早いな」
「あたりめえだ、あんな野郎の目にふれて、まごまごしていられるものか」
「だが、うまいぐあいに行ったじゃねえか」
「天道様の御守護だな」
「笑っているぜ、天道様が」
「そのせいか、いやにカンカン照りつけやがって、脳天が焦げるようだ」
草いきれの道を泳ぐように急いで、石和街道の並木へ出ました。そしてまた少し城下の方へ逆戻りをして来る。