Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

目ざまし草の胴乱をかけた煙草屋ていの男、しらみ絞りで顔をくるんだ男、或いは物売り或いは旅人、そうした者に、四、五町ごとに出逢います。

ちょうど、うす暗い河岸ぶちへ出た時、

「秦野屋じゃねえか」

辻行燈のかげに身をひそめていたのが、のッそりと立って来る。

「雲霧か」

「お急ぎだな」

「うム、ちょっと」

「首尾はどうだい、そっちの?」

「血眼さ。ところで、おめえはそんな所で、何をしている?」

「万太郎と釘勘のやつが、さっき、この横の屋敷へはいったので、待ちぶせているんだ」

「首尾よくたのむぜ」

「親分はどうしたろうな、さっぱり出会う折がねえ」

「実あ、おれも、その親分をさがしているんだ。どうも、諸所の辻を見てあるくと、悪い触れが廻っているから……」

「何しろ、早い仕事をしなくッちゃ、この甲府にも長ッ尻はしていられない」

「おッ……誰か来た」

「えっ? ……」と、雲霧は黒塀の横へ飛び退く。

「じゃあ……」

「うム、また逢おうぜ」

目交ぜで別れて、秦野屋は風のごとく馳け去りました。そして、馳けるとなるとその足の早いこと何をあてに急いだのかわかりませんが、暗のなかに雲霧が見送っていると、人が宙を飛んでゆくというよりも、一箇の笠が飛んでゆくとしか見えない。