Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
ころびばてれんと。
ころばぬばてれんと。
何しろ、皮肉な対照でありました。
ところで今――こんもりした榎の下の暗がりで、ヨハンは石室の鉄窓からお蝶の夜目にもあでやかな影を見ながら、
「ど、こへゆきますか、こんな晩に」
と怪訝かしそうに問い直してくる。
「わたし?」
お蝶は面倒くさかッたが、
「牡丹畑へかんざしを探しに――昼間、あの辺で失くしたのを」
と、出まかせなことをいう。
「かんざし?」
ヨハンは片言の日本語で、
「アア、髪へさすかんざし? ……それなら、あした、明るい時に見に行った方がよいでしょう」
「だッて、もし、雨でも降ると、泥の中に埋まってしまうかも知れないんですもの……あたし、心配で、寝られやしない」
こんな答えをする時のお蝶は、いかにも無邪気そうな、あどけない表情をして、あの毒針を心のどこへ引ッこめてしまうのか、ちょうどヨハンの故郷、羅馬カピトルの丘の競馬場や浴宮に出入りする軽快な踊りッ子を見るように、かれに郷慕のまぼろしを描かせます。
「いつか、貴女に話したいことを、私、胸に持っています」
牢の中では、思い出したように不意にいって――
「お蝶さん、ちょうどいい、話があります」