Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

「太夫さん、疲れるといけませんから。疲れるとあしたの舞台にさわりますから」

と、なだめすかして寝せようとするのを振り払って、

「お酒を持っておいでよ、お酒をさ。酒でも飲まなけりゃ、生きちゃあいられないよ」

と、そろそろ疳だかくなったのが初まりで、それから手酌の茶碗酒が、自棄のやん八とまでさせて来たものであります。

しかし今、太夫元の使いとして来た男を追い払ったことばは、決して、酒の上の駄々や手固摺らせではなく、お粂としてはほんとうにそう腹をきめたのでしょう、その後で、家からここへ移して来た、自分の着類、舞台の用具、衣裳一式、のこらずそこに積んで一座の者へ、

「気の毒だけれどお前たちは、ここにあるだけの物をいいように分けて、――がさ張るものは道具屋にでも何にでも売払ってお金にするさ、――そしてそれを路銀にどこへでも身のさんだんをつけておくれ、ああサ、今日から嵐一座はぶちこわしさ」

なんとなだめても、思い直しそうな脈はありませんが、それでも、男衆や、女弟子たちが、涙ぐんで、

「太夫さん、後生ですからそんな自棄をおこさないで。一座の者が懸命になれば、またいい芽を吹く時節もありましょうから」