Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
ところが。
第一に何よりの手ちがいを見たのは、人数が、しのびやかに山門へ近づくやいな、計らぬかごと人とが、向うから、何も知らずに出て来て、手配のととのわぬうちに、そこで、いやでも物音をあげなければならなかった不測の事です。
不意だったので、先も驚いたでしょうが、捕手の方も行動が一致しない。
とこうするうち、本堂から火があがる。人数はいたずらにちりぢりになる。そして、かんじんなお蝶の姿と日本左衛門が、いつまでも見当りませんから、万太郎たるもの、青筋を立てるいわれは多分にあります。
釘勘はまた、この人あるがため、自分の敏捷を欠いているのを知っていますが、口にはいえないで、
「じゃ、本堂の方は、手前が見届けますから、若様は、裏山をひとつ……」
と、それとなく、無難な方へ彼を避けさせようとしましたが、何がさて、人のさしずなどをうけて、そのとおりに動く万太郎ではありません。
「いや、裏山へはそちが行け。あの火の手をあやぶんで、捕手どもは、伽藍のうちからみな飛び出しておるではないか。ふがいないやつめ」
紅蓮の廂の上にのぞんで、煙の立ちこめた真っ暗な本堂の階段へ、もう、一散に走っております。