Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「どうしたのじゃ、相良」
と、彼の肩へ手をのせました。
「かねて、釘勘からそちの消息は聞いていたが、なぜ、わしのところへ戻って来ぬのじゃ。この万太郎にあいそが尽きたか」
以前と少しも変りのない主従のことばです。いや、そういう階級意識を超えた愛熱がことばのうちに溢れていました。
「滅相もない仰せです。不肖者の金吾、ただ申し訳もござりませぬ」
彼には、そういうだけの答えしかありません。もっとつけ加えれば、まだここで万太郎と会うのは何としても面目がないということを言いたかったでしょう。
けれど、万太郎はこの奇遇に何ものも忘れたような満足をあらわしている。そして、釘勘と共に、どうしてここへ来合せたかとたずねましたが、彼は、熱海以来の経過や秦野屋九兵衛の助力のことなどを、ここでくわしく話すには、あまりに心がせいているので、簡単にその要点だけを言って、すぐに、日本左衛門のあとを追おうとして立ち上がりました。
で、釘勘も万太郎も、にわかに奇遇のよろこびから醒めて、彼と共に、鼻寺の庭から灌木の小道をわけて、日本左衛門が逃げのびたとおぼしき裏山へ駈けあかって行きます。