Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「ここは何処?」
「秩父の奥の天童谷という盆地でございます」
「じゃ、やっぱり、漆掻きの男たちに案内されて来た所じゃないの」
「その切支丹村でございます。私はこの夏の初めごろから、この天童谷の司祭者になってくれと頼まれて、ここに住んでいるのでございます。――しかしお姫様、あなたと私と会ったのは、あれから今夜が初めてではございませんね」
「私が甲州へゆく途中で、やはり、こんな深い谷あいで、大勢のものが集まって、祈祷をあげていたのを見たことがあるわ」
「その群のなかに、私の姿は見ませんでしたか」
「ヨハンさん――と、あの時、思わず谷へ呼んだけれど」
「まさかと、お信じなさらなかったでしょう、どう考えても、小石川の牢にいる私が、あんな所に祈祷をあげているなどという理屈はありませんからね」
「だけれど、あれから後、甲府の町で、蜻蛉売りの久助という者から、いろんな話をすっかり聞いていたのだよ」
「アア、久助。あれもこの切支丹村のひとりでございます、あなたを村へ連れてくるようにと私の吩咐けをうけて、甲府へ行ったのでございましたが、日本左衛門に寝込みを襲われて、不憫な死にかたをしたそうで」