Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
かかればかかるほど、凡婦と凡夫、自己の錯覚に捉われてゆくばかりで、
「どうして開かないのだろう。こんなはずはない、こんなはずは……」
精と根気をすり減らすのみでした。
そうです。鍵がきかないのかと一時思ったのは、あれは、龍平があわててカラ廻りをさせていたので、いつのまにかそれは立派にはずれていて、そのくせ、依然たる開かずの戸。お蝶の根気も龍平の力もうけつけたものではない。
「よそうじゃねえか」
とうとう男が、弱音を吹くと、
「なにさ!」
かえってお蝶の方はやッきとなって、
「折角鍵をなにして来たのに、またいついい折があるか分りゃあしない」
「そうだなあ……。どれ、もう一度おれが」
浅ましいやつ。
まだ感づかずに、口をへの字に曲げて渾力をしぼっているかれの形は、力をこめればこめるほど冷蔑と滑稽を思わせますが、吾人にもこんな例がままあって、開けばかえって不幸な扉を、無理にも開こうとし、その開かぬことを人生の不運となげいたりして、龍平と同じ努力をやることが処生の随所にあるような気もします。
「あっ……お待ち!」
その時。
お蝶が不意に袖をひきましたが、龍平は磁力に吸いつけられてしまったように、