Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「また来年の春になったら、熱海の海辺へ行って、駆け出してみたい」
「あの汐鳴りを耳にうかべると、おりんもいつでも、行って見とうございます。それにしても、相良様は、どうなすったでございましょうね」
「りんや……」と月江は琴のそばを離れて、
「お前もまだ、あの方のことを覚えておいでかえ」
「ええ、折にふれて、思い出すのでございますよ。御病気はなおったかしら? あの御一緒の部屋にいた、美しい伝法な女子はどうしたろうかなどと」
「ああ、あの下町風な……」と月江は憂鬱になって、暫く間をおいてから、「――お粂とかいう女だろう」
「お嬢様とは、顔を見合わせても、口もきかないような女で、いつでも私たちを、じろりと切れの長い目で見て通りました」
「あの女は、いったい金吾様の何なのだろうね、御姉弟ではないようだし」
「夫婦にしては似合いませぬし、まったく妙な道づれでしたが、あの騒ぎが起った最後の晩には、とうとう、金吾様は女を捨てて姿をかくす、また女は、夜ッぴて金吾様を追って海辺を叫んで歩いておりました」
話のうちに、両女は当夜の波風を思いだして、思わず、襟元をぞっとさせています。
ちょうど、そうした話の切れた時です、奥まった庭の深い暗に、竹でも裂けるような物音がひびいて、一瞬の寂寞を破りました。