Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
――雲霧の仁三、四ツ目屋の新助、そのほか二人の百姓ていの男と、もう一人は、これも同じ地底に永らく陽の目を見ずにいた馬春堂先生。
彼等はいち早く、死地を逃げ出して来ました。――逃げて来る前に、「山の会堂」の祭壇にあった燈明でも仆して来たのか、蔦葛をよじ登って断崖の上に立ってみると、盆地の底からまっ黒な煙が渦をまいて噴き揚ッている。
――後に馬春堂が人に話して、そこまでの事は何が何やら分らなかったと言ったそうですが、無理はありません。
「ここは陽の照っている世間の一部だ。おれの上には太陽がある……」
そう考えただけで先生は、不甲斐なくもそこでまた、生命意識をボウとさせてしまったものとみえます。
――気がついてみると、傍にはもう誰も居ない。
雲霧も、四ツ目屋も、また一緒に逃げて来た二人の墓場の友達も、いつのまにかそこにはおりません。彼は彼ひとりで、ボウとした意識のままで、何処か分らない山の中を歩いている。決して、そこが何処だろうか、この道の行先は何処かなどと、そんな事を考えてもいなければ、知ろうともしないのであります。
先生は、ただそうして、歩いている。