Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「高麗の郷や、武蔵野や甲府や秩父や、ずいぶん歩き廻られたのに、まだこの上何処へ行こうと言われるのじゃ」
「や、よく御存知で……」
「柳営には、お庭番という密偵の者が居る」
「伊賀者ですな」
「左様、それが時折いろいろな事を報らせてまいる。それを聞くのは、お駕台の下で、只今万太郎殿は五日市より小仏を越えて、峠の甘酒茶屋に着きました、などという事まで手にとるように教えてくれるのじゃ」
「ははア……」と万太郎は少し呆れた顔をする。
「しかしまだこれから遠方へ行くということは初耳であるが、一体どこへ行くつもりであるな?」
「羅馬へ渡ろうと思っています」
「羅馬へ?」
「如何でしょうか」
「よかろう。羅馬はよかろう。いかにも其許のような自由児には、この吉宗の政治を布く日本には窮屈で居たたまれまい」
「そこで、折入ってお願いがあるのですが」
「船の便なら、長崎奉行に申しつけて、蛮船の都合万端、よきように取計ろうて進ぜよう」
「いや、その前に」
「何であるか、申されてみるがよい」
「当江戸城のお庭を拝見させていただきたいのですが」
会話は、軽く進んでいますが、吉宗の腹にも一物、万太郎の胸にも一物、或る反感を隠し合っています。