Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
万太郎は怪しみました。
無論、要害堅固な江戸城のこと故、寝ずの番もあろう、黒鍬の者の夜廻りもあろう。けれどあの古参な剛兵衛でさえ昼も滅多に来たことがないと言ったこの辺りに、夜半徘徊している人間はありえぬはずで、あるとすれば奇怪きわまる話ではないか。
とまれ彼は、息を殺して見つめていると、その人影は頗るゆっくりした足運びで、すぐ二人の目と鼻の先を通りかかります。
ひとみをこらして窺うと、暗夜なので充分に容貌は見えませんが、中肉中背のどっちかというと優形な男。なお、万太郎がいぶかしく思ったのは、黒の覆面に黒の膝行袴をはいて、自分や金吾とほとんど同じ身ごしらえをしていることで、ちょうど夢遊病にでもなった自分の分身がそこを通って行くような気がする。
「不思議だ」
思わず、彼が身をのび出したので、手をかけていた樹の枝からばらばらと夜露が落ち、下を通る男の影に降りこぼれたので、その影は冷やりとしたように立ち止まって、覆面の顔を仰向けに振り上げました。
はっと、二人は息をのみましたが、せつなチラリと見たその顔の輪郭が、夜目のせいかクッキリと白い。
先でも気がついたものか、はっと思うまに、その不思議な人物は、フイと何処へやら消えうせていました。