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Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

切支丹屋敷の吉野桜の下で、父の二官がよく口笛に吹いていたのを、薄ら覚えに記憶していた羅馬の唄――。

お蝶の心は、その意味のわからない唄で、虱絞りの町人を煙に巻いてしまおうという軽い悪戯な気持か、飢えと寒さを、それによって忘れようとする情けない気持か、どっちとも分りませんが、しきりと、膝に指を躍らせています。

「あれ、もしやおめえは、切支丹屋敷に居たお蝶っていう娘じゃねえのか」

「えっ?」

「そうだよ……道理で何処か見たことのある娘だと思ったが」

町人は手拭をとって、

「――似ているはずだ、二官の娘のお蝶じゃないか。おれはおめえといい仲だった山屋敷の仲間の龍平の所へ、よく遊びに出かけた、本所の鶴吉という髪結よ、お忘れかい」

「……知らないわ、私」

わざとらしく首を傾げるお蝶の顔を指さして、

「知らねえことはねえじゃねえか。ほれ、いつかおめえと龍公が、山屋敷の仲間部屋で、何か寝そべッて話している所へ、おれが不意に戸を開けて、びっくりさせたこともある」

「じゃ、知っているとして置くわ」

「アー成程、そうそう、まさかおめえも、気のゆるせない人間には、滅多に知っているとは返辞のできない身の上だったな。