Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「じゃ、親分」
「叱ッ……」と、目で叱ると、黒い頭巾の侍は、その上から一枚の蓆を被って、ぺたりと舟板に身をつけて寝てしまいました。
二艘づれで下って来た、伊奈半十郎配下の水上見廻りの舟は、忽ち、そこに漂う船影を見つけると、二手に分れて、一艘はお蝶の乗っている苫舟へこぎつけ、また一艘は矢のように率八の舟へ寄って来ます。
そして、船手の同心でしょう、朱文字の提燈を水の上にあげて、
「何処だ?」
と不意に声をかける。
川合図というやつで、それにまごつくと忽ち川番所まで引ッ張って行かれるのが通例でした。
「へい、辰巳の金田屋でございます。紅梅河岸までお客を迎えに参りますところで」
「船の焼印は」
「丸に金の字」
「よし、行け」
「御苦労様でございます」
ギイーとわかれて、一方は両国橋の脚の蔭へ、率八という男の櫓は、そこから舳を曲げて幅の狭い神田川の中へすべり込んで行く。
「親分もうよろしゅうございますよ」
「寒いからこのまま手枕で寝ていよう」
「それも工合がいいかも知れません。じゃ風邪をひくといけませんから」と、ちょっと櫓を放して、隅に丸めてある掻巻を、蓆と更えてかけます。