Japanische Klassiker mit Furigana
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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Lesen Sie 猟奇の果 (りょうきのはて) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 134.971 Zeichen · 270 Bildschirme
二人はそうしたまま、三十秒程、見事に出来た生人形の様に、動きもせず物も云わなかった。
「ハハハハハハハ、明智君、人の悪いいたずらをしちゃいけない」総監はやっと元気を取戻して、泣き笑いの表情で、強いて大声を出した。「僕の似顔人形を作って、おどかそうなんて」
如何にも、トランクの中の人物は、赤松警視総監の似顔人形であった。肥った身体、丸い顔、愛嬌のあるチョビ髭、クリクリと丸い目、帽子も制服も帯剣も靴も、凡て凡て総監そっくり、髪の毛の数まで同じかと疑われるばかりだ。
「人形だとおっしゃるのですか」明智は毒々しい声で云った。
「もっとよく見てごらんなさい」
総監は悪夢にうなされた気持で、余りにもよく出来た、自分と寸分違わぬ生人形に見入った。
見ている内に、警視総監の心臓でさえも、ギョクンと喉の辺まで飛上る様な、恐ろしい事実が分って来た。
そいつは生きていたのだ。人形ではなかったのだ。確かに呼吸をしている。窮屈に曲げた腹部が、静かに波打っているではないか。パチパチと、瞬きさえしているではないか。
総監は余りの出来事に、採るべき手段を考える力もなく、放心の体で、トランクの中のもう一人の総監を眺めていた。