Japanische Klassiker mit Furigana
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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Lesen Sie 猟奇の果 (りょうきのはて) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 134.971 Zeichen · 270 Bildschirme
人形の丸い頬が、ピクピクと痙攣を始めた。ハッと息を呑む間に、その痙攣が、だんだんひどくなって行ったかと思うと、唇がキューッとめくれて、白い歯並が現われ、その顔がいきなり、ニタニタと笑い出したのである。
それを見ると、五十歳の赤松総監が、子供の様な泣き顔になって、タジタジとあとじさりをした。
と、同時に、トランクの中の男が、ビックリ箱を飛び出す蛇みたいに、突然ニョッキリと立上がったかと思うと、諸手を拡げて総監に飛びかかって行った。
頭から足の先まで、そっくり同じ、二人総監の取組合いだ。しかも、それが夢でもなければ、お芝居でもない。白昼、警視庁総監室での出来事だ。腹を抱えてゲラゲラ笑い出したい程滑稽で、しかも同時に、ゾーッと総毛立つ程恐ろしい事柄である。
飛びかかって行った方の、つまり偽総監が、余りの事に手出しも出来ぬ本物の総監を、うしろに廻って、羽交締めにしてしまった。
だが、流石は百戦練磨の老政治家だ。総監はそれ程の恐怖に直面しながら、はしたなくわめき出す様なことはしなかった。彼はじっと心を落ちつけて、羽交締めにされたまま、ジリジリとデスクの側に近づくと、僅かに動く右手の指で、ソッと卓上の呼鈴を押そうとした。