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Japanische Klassiker mit Furigana

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すさのおのみこと

素戔嗚尊

芥川 竜之介

Lesen Sie 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.917 Zeichen · 86 Bildschirme

Aozora Bunko

「私が大蛇の犠になるのは、神々の思召しでございます。」

「そうかも知れません。しかし犠になると云う事がなかったら、あなたは今時分たった一人、こんな所に来てはいないでしょう。して見ると神々の思召しは、あなたを大蛇の犠にするより、反って私に大蛇の命を断たせようと云うのかも知れません。」

彼は櫛名田姫の前に足を止めた。と同時に一瞬間、厳な権威の閃きが彼の醜い眉目の間に磅したように思われた。

「けれども巫女が申しますには――」

櫛名田姫の声はほとんど聞えなかった。

「巫女は神々の言葉を伝えるものです。神々の謎を解くものではありません。」

この時突然二頭の鹿が、もう暗くなった向うの松の下から、わずかに薄白んだ川の中へ、水煙を立てて跳りこんだ。そうして角を並べたまま、必死にこちらへ泳ぎ出した。

「あの鹿の慌てようは――もしや来るのではございますまいか。あれが、――あの恐ろしい神が、――」

櫛名田姫はまるで狂気のように、素戔嗚の腰へ縋りついた。

「そうです。とうとう来たようです。神々の謎の解ける時が。」

彼は対岸に眼を配りながら、おもむろに高麗剣の柄へ手をかけた。するとその言葉がまだ終らない内に、驟雨の襲いかかるような音が、対岸の松林を震わせながら、その上に疎な星を撒いた、山々の空へ上り出した。