Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Lesen Sie 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 156.866 Zeichen · 318 Bildschirme

Aozora Bunko

「お糸さんが、若旦那と逃げ出したよ、書置きをして」

「えッ」

「行先は東海道だ、――江の島で心中をするんだって」

「しまったッ」

与次郎は飛出すと、袷の尻を端折って駆け出しました。上根岸から御徒士町へ、筋違いから、日本橋へ――。

大跛足で、家の中を歩くのさえ不自由そうにしていた与次郎の足の早いこと。

その頃の江戸の町人は、滅多に駕籠に乗れなかったもの、急ぐ用事は、二本の足で駆けるより外に方法はありません。

娘お糸、――十九年間手塩にかけて輝くばかりに美しく育てた一人娘お糸の命を救うためには、与次郎はもう跛者なんかの真似をしていられなかったのです。事実、右の高股を切られて、跛だったには相違ありませんが、異常な体力の持主で、そんな事は見事に征服するだけの自信があったのです。

上根岸から日本橋まで、ほんの四半刻ともかかりません。この勢いで駆けて行ったら、品川手前でお糸に追い付き、その無法な道行から引戻すことも出来たでしょう。が、日本橋へ差しかかった時、与次郎は思わぬ障害に出っ逢しました。

「待て待て与次郎」

「え?」

「天狗小僧の与吉、――三千両の御用金泥捧、――玉屋の番頭甚助殺しの下手人、神妙にお縄を頂戴せい」