Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Lesen Sie 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 114.139 Zeichen · 233 Bildschirme

Aozora Bunko

二人はしかし、生木を割かれたまま、じっと運命に甘んじているにしては若すぎました。土蔵の二階に追い上げられて、しばらくの謹慎を強いられた染五郎が、まず思い出したのは、お絹が嫁入りする前のかつての日、ここから川を隔てて、新茅場町のお絹の家の裏二階と合図を交し合った昔の記憶だったのです。染五郎の家の小網町と、お絹の家の新茅場町とは、陸地を拾って行く段になると、右へ廻って思案橋または親爺橋、荒布橋、江戸橋、海賊橋と橋を四つ、左へ廻って箱崎橋――一に崩れ橋――港橋、霊岸橋と橋を三つ渡らなければなりませんが、真っ直ぐに鎧の渡しを渡れば眼と鼻の間で、丸屋の土蔵の二階窓から、お絹の里の福井屋の二階は、手に取るように見えるのでした。

染五郎はさっそく窓の格子に手拭を出して見せました。千万無量の思慕を籠めた手拭が、ヒラヒラと夕風に翻ると、それを待ち構えたように、川を隔てた福井屋の二階欄干からは、赤い鹿の子絞りの扱帯が下がるではありませんか。

「あ、お絹」

染五郎は思わず乗り出しました。欄干の赤い扱帯こそは、かつて恋仲だった頃のお絹が、万事上首尾という意味を、川を隔てて染五郎に言い送る合図だったのです。