Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 114.139 Zeichen · 233 Bildschirme
心きいた者は、町内の外科と、土地の御用聞――三河町の佐吉と、町役人に急を知らせました。が、時を移さず飛んで来た医者も御用聞も、手の下しようはありません。鐘五郎は間違いもなく人手に掛って相果てたのですが、見渡したところ、窓も雨戸も、稼業柄らしく恐ろしく厳重に締めきられ、入口はたった一つ、酔ったとはいっても、三十八人の子分どもが、七十六の眼で見張っている酒席の後ろの廊下――開けっ放しの三尺の板敷を通る外に、ここへの通路はなかったのです。
稼業柄らしく――という言葉は、溝口屋鐘五郎の生活を形容するためには、極めて重要な意義を持つものでした。江戸で一番と言われた人入れ稼業の溝口屋が、ここまで伸しあげるためには、どれだけ多勢の人を泣かせて来たかわからず、従ってどこに命を狙う敵がいるのか、鐘五郎自身にも見当が付かぬ有様で、出入りには三人五人の子分をつれ、入っては二重三重の締りの中に籠って、不慮の襲撃に備えるのが、鐘五郎日頃のたしなみになっているのでした。
「親分がここへ入ってから、誰も来たものはないか」
中年者の、ことに馴れた佐吉は、繰り返し繰り返し訊きましたが、乱酒狂態の中にも、お互が見張った形になっているので、夥しい燭台と提灯の明りに照らされながら、廊下をここまで忍べる道理はありません。