Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
「まあ、お君さんたら、頸筋に生ぶ毛が一杯……」生えているのに気が付いたのを倖い、大袈裟に言うので、銭湯の帰り、散髪屋へ立ち寄ってあたって貰った。剃刀が冷やりと顔に触れた途端、どきッと戦慄を感じたが、やがてさくさくと皮膚の上を走って行く快い感触に、思わず体が堅くなり、石鹸と化粧料の匂いのしみ込んだ手が顔の筋肉をつまみあげるたびに、体が空を飛び、軽部を想い出した。
そのようなお君に、そこの職人の村田は商売だからという顔をときどき鏡にたしかめて見なければならなかった。しかし、その後月に二回は必ずやって来るお君に、村田は平気で居れず、ある夜、新聞紙に包んだセルの反物を持って路地へやって来て、
「思い切って一張羅イを張りこみましてん。済んまへんが一つ……」縫うてくれと頼むと、そのままぎこちない世間話をしながらいつまでも坐り込み、お君を口説く機会は今だ今だと心に叫んでいたが、そんな彼の肚を知ってか知らずにか、お君は、長願寺の和尚さんももう六十一の本卦ですなというつまらぬ話にも、くるりくるりと眼玉をまわして、げらげら笑っていた。
豹一は側に寝そべっていたが、いきなり、つと起き上ると、きちんと両手を膝の上に並べて、村田の顔を瞶め、何か年齢を超えて挑みかかって来る眼付きだと、村田は怖れ見た。