Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
それが紀代子には豹一の手前ひそかに恥しかった。しかも、そのハンドバッグはたった四円八十銭ではないかと、こそこそと逃げるように立去ったが、それでは余り芸が無さ過ぎると思った。ふと振り向いた。その途端にペロリと舌を出した。女学生のような無邪気な仕草をちょっと借りてみたのは咄嗟の智慧だった。それでなんとなく世帯臭い恥しさが隠せると思ったのである。それに、ちょっとした媚態になるではないかと、紀代子は計算していた。だから一層効果的にと、長い間舌を出していた。つまりは年に似合わぬ悪どい表情だった。
ところが豹一にはそんな紀代子の気持は分らず、紀代子の念入りの表情を見てすっかり参ってしまった。(よし、どうあっても自尊心の傷を回復しなければならぬ!)戎橋の上を通りながら、豹一は上衣のボタンを一つちぎってしまった。彼の心は朝から興奮に駆られ易い状態にあった。いきなり難波の方へ引き返した。(紀代子の顔を撲ってやる義務がある)こんな野蛮なことを考えた。電車通のゴーストップで信号を待っていると、ふと、(しかし、まさか雑閙の中で撲るわけにも行くまい)青が出て、大股で横切りながら、(いや、雑閙であることが是非必要なんだ! 効果もあるし、しかも非常な勇気が要る)