Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
お君は気の向いた時に叱った。
八つの時、学校から帰ると、いきなり仕立おろしの久留米の綿入を着せられた。筒っぽの袖に鼻をつけると、紺の匂いがぷんぷん鼻の穴にはいって来て、気取り屋の豹一には嬉しい晴着だったが、流石に有頂天にはなれなかった。お君はいつになく厚化粧し、その顔を子供心に美しいと見たが、何故かうなずけなかった。仕付糸をとってやりながら、
「向う様へ行ったら行儀ようするんやぜ」
お君は常の口調だったが、豹一は何か叱られていると聴いた。
路地の入口に人力車が三台来て並ぶと、母の顔は瞬間面のようになり、子供の分別ながらそれを二十六の花嫁の顔と見て、取りつく島もないしょんぼりした気持になった。火の気を消してしまった火鉢の上に手をかざし、張子の虎のように抜衣紋した白い首をぬっと突き出し、じじむさい恰好で坐っているところを、豹一は立たされ、人力車に乗せられた。見知らぬ人が前の車に、母はその次に、豹一はいちばん後の車。一人前に車の上にちょこんと収っている姿をひねてると思ったか、車夫は、
「坊ん坊ん。落ちんようにしっかり掴まってなはれや」
その声にお君はちらりと振り向いた。