Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
事情がそれとわかって、母親はほっとしたが、それでも余程周章てたと見えて、娘に靴を買ってやるべくいれて置いた金を財布ぐるみ公衆電話のなかへ置き忘れてしまった、――心配したのはあとにもさきにもその時だけで、以後帰宅がおそくなっても安心して居れたのである。信用していたのだ。
それが、例の事件があってからは、もう娘の身辺が心配で心配でたまらなくなった。ことにオリンピアへ出る昨日今日がそうだった。事件が一段落すんで、やれやれと骨身を削られて細った肩をなでたのも束の間だ。もう男たちの遊び場所へ顔出ししなければならぬようになってしまったのだ。二度とあんな間違いは起してくれるなと、「只今」という多鶴子の声をきくまでは、長火鉢の傍も離れられないのだった。
そんな風に心配されているのかと思うと、多鶴子はなにかたまらなかった。しかもそうして心配している顔をかくそうとする母親の気持がわかるだけに、一層たまらなかった。
「莫迦ね。早く寝みなさいな」しかし、母親はすぐには起とうとしなかった。なにかおろおろとして多鶴子の顔色をうかがっているのだった。
母親は今夜誰か男の客があることを、敏感に知っていた。