Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

全く申分ないほど、愛相がよかったのである。

若い女中は一目見た途端に、豹一を好いてしまった。映画女優のところへ女中に雇われるだけあって、彼女は非常に映画趣味があったから、ぶくぶくのオーバーを不恰好に身につけた豹一を見ると夜ふけのせいもあって、此の美少年は「男装の麗人」ではなかろうかと思ったほどである。全くだしぬけにはしたない恋を感じてしまった女中は、可哀相におどおどして応接間へ現れた。珈琲茶碗を差出すのがたまらなく恥しかった。汚い手を見せねばならぬからであった。

ところが、もし豹一が幾分でもこの女中に惹きつけられるところがあるとすれば、それは彼女が大急ぎでべたべたにぬりつけた鼻の頭ではなくて、彼女が見せるのを憚った、赤切れた汚い手だったかも知れない。豹一にとっては、それだけ切りはなして見ただけでも、その手は胸をうつに充分だった。母親の手を連想するからであった。ところが、豹一はその手を豪華な装飾に輝いている応接間で見た。豹一は一層胸を打たれて、弥生座の舞台で踊っていた東銀子の赤い足を不意に思い出した。豹一は思わず涙が落ちそうになったのを、周章ててその部屋に対する反感で拭って起ち上った。