Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

乗り移って来た。所詮心の平かな筈はなかった。

いくらか自惚れかけているところだけに、多鶴子の動揺は一層辛かった。それに情けないことには、豹一の眼から見て、矢野は想像以上に立派に見えた。寒い風も当らぬような顔で立去って行ったのではないか。豹一は自分が矢野の前で頗る影が薄かったと、思った。

多鶴子は黙々としていたので、豹一はそんな風に孤独な考えに耽った。

(矢野はおれがこの女の傍にいるのを見て、ちゃんちゃらおかしいと思っただろう)

嫉妬の気持はこうして、徐々に豹一の心にしのび込んで来た。豹一の心を惹きつけようという多鶴子のさっきからの無意識な努力は、かえって黙っていることによってはじめて実を結んだ。

だが、さすがに豹一は余り黙っているので、いつまでもついて歩いているのは浅ましいことだと、思った。豹一は多鶴子の顔を非常に美しいと、意識しながら、

「僕ここらで失礼します」と、言った。そして、だしぬけに傍を離れてしまった。

そんな風にいきなり立ち去ろうとした豹一を見て、多鶴子ははじめてわれにかえった。

「あ、毛利さん」呼び止めて、「今夜『オリンピア』へ来て下さらない?」