Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

ラジウム温泉を出ると、公衆電話のなかへ飛び込んだ。五銭白銅を入れて、待っている一瞬、胸さわぎした。多鶴子の電話の声が美しかったことを想い出した。

「通じましたから、お話し下さい」交換手の声に、多鶴子の家の内部が見える思いだった。女中が電話口に出ていた。多鶴子はいるかときくと、

「只今、お留守でございますが……」それでは、やはり昨夜から帰っていなかったのかと、改めて淋しい気持になり、

「あ、そうですか。失礼しました」と、切ろうとすると、女中は豹一の声だと察したらしく、

「あんた、毛利さん? なぜ昨夜お帰りにならなかった? 先生と御一緒じゃなかったの? ――そう? あんたいまどこ? 早く帰って来て下さいな。私ひとりなのよ、淋しいわ」

帰るもんかと、豹一は電話を切った。しかし、帝塚山へ帰らないとすれば、もう豹一の帰るところは、谷町九丁目の家よりほかになかった。

新聞社をやめて、おまけに多鶴子の家で「食客」同様の生活をしていた以上、心にかかりながら、やはり母親に会わす顔がないままにずるずると遠のいて半月も経っていたのである。

いまさら帰れないと、豹一は背中を焼かれる思いだったが、しかし、もはやそこよりほかに帰って行くところがないというより、なんの前ぶれもなしに突然のように姿を消してしまった自分を、身を切られる想いで心配