Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

「一時間も待ってたんやわ」と紀代子は半泣きのまま、寄り添うて来た。

並んで歩いた。夜がするすると落ちて、瓦斯燈の蒼白い光の中へ沈んで消えていた。美術館の建物が小高い丘の上に黒く聳えていた。グランドではランニングシャツを着た男がほの暗い電燈の光を浴びて、影絵のように走っていた。藤棚の下を通る時、植物の匂いがした。紀代子は胸をふくらました。時々肩が擦れた。豹一にはそれが飛び上るような痛い感触だった。

(女と夜の公園を散歩するなんて、いやなことだ)

彼はこの感想をニキビの同級生に伝えてやろうと思った。紀代子にそれと分る位露骨に、つと離れて歩いた。そんな豹一が紀代子には好ましかった。(此の少年は恥しがりで、神経質だわ)しみじみと見上げると、豹一の子供じみた顔の中で一個所だけ、子供離れしたところがあった。広い額に一筋静脈が蒼白く浮き出しているのだ。それが物想いに悩む少年らしく見えた。(きっと私のことで思い悩んでいるのだわ!)

しかし、その瞬間豹一は、こともあろうに、

(お前の母親はいま高利貸の亭主に女中のようにこき使われているんだぞ! いや、それよりも、もっとひどい事をされているんだぞ)と自分に言い聴かせていた。