Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
彼がこれまで感謝したのは母親にだけだった。
(そうだ!)といきなり豹一は呟いた。(俺が掟を破る義務を感ずるのは、誰もそれを破る勇気のある奴がいないからだ!)
そう思いつくと、彼ははじめて決然として来た。京都特有の春霞のなかに、キラキラと澄んだ光で輝いている四条通の灯が山の上から眺められた。その明るい光がほのぼのとしたなつかしさで自分を呼んでいると、大袈裟に思った。
(そうだ、四条通へ行こう。あそこなら一時間では帰れぬだろう。掟を破るのはいまだ)
豹一はその決心を示すように、白線のはいった帽子を脱いで、紺ヘルの上着のポケットへ突っ込んだ。(なんだ。こんな帽子)
彼は塾生の誰もが三高生であることを誇りとして、銭湯へ行くのにも制帽を脱がぬのをひそかに軽蔑していたのである。人一倍虚栄心の強い豹一がそんな制帽に未練をもたぬとは、彼も相当変ったのである。しかも京都では三高の生徒位、「もてる」人種はいないのではないか。彼は腰につるしていた手拭をとってしまった。
(これはなんのまじないだ! 三高生の特権のシンボルか)
つまり、彼はその特権が虫が好かないのだった。
豹一は吉田神社の長い石段を降りて、校門の前まで来た。