Classiques japonais avec furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lisez あらくれ de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 119 451 caractères · 236 écrans
八十
時々他国の書生や勤め人をおいたりなどして、妹夫婦が細い生活の補助にしているその二階からは、町の活動写真のイルミネーションや、劇場の窓の明などが能く見えた。四下には若葉が日に日に繁って、遠い田圃からは、喧しい蛙の声が、物悲しく聞えた。春の支度でやって来た二人には、ここの陽気はもう大分暑かった。小野田はホワイト一枚になって寝転んでいたが、昔住慣れた町で、巧く行きさえすれば、お島と二人でここで面白い暮しができそうに思えた。上海くんだりまで出かけて行くことが、重苦しい彼の心には億劫に想われはじめていた。
「厭なこった、こんな田舎の町なんか、成功したって高が知れている。東京へ帰ったって威張れやしないよ」そう言って拒むお島の空想家じみた頭脳には、ぼろい金儲けの転がっていそうな上海行が、自分に箔をつける一廉の洋行か何ぞのように思われていた。
八十
其処をも散々遣散してN――市を引揚げて、どこへ落着く当もなしに、暑い或日の午後に新橋へ入って来たとき、二人の体には、一枚ずつ著けたもののほか何一つすら著いていなかった。
鼻息の荒いお島たちは、人の気風の温和でそして疑り深いN――市では、どこでも無気味がられて相手にされなかった。