Classiques japonais avec furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lisez 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 150 635 caractères · 306 écrans
静山は峻烈であった。しかも昨夜以上、強かに泥舟は突き負かされた。
「起てっ。立ち直って来い」
静山は云う。そして猛烈な刺撃に次ぐ刺撃を以て、泥舟の息も塞ぐばかりだった。
何遍、大床にぶっ仆れたか。果ては起ちも得ず、気息奄々となると、
「意気地のない!」と叱咤して、静山は怒り罵るが如き形相を示した。
「少年九歳の頃の精魂は失ったのか。われも人間の精魂ぞ。汝も人間の精魂ぞ。如何なればかくの如き腕の差があるのかを考えて見たか。――明日の夜こそは、十本勝負をしよう」
云うかと思えば、掻消えるように、静山の姿はもう見えない。
終日、朦朧とした面持で、泥舟はうつつに次の一日を過した。そして深夜となると、頭は冴えて寝つかれもしなかった。一念、工夫苦心していたのだった。そしてそのまま、昏々と夢現の境にはいった頃、兄の姿はまた、前の夜と変りなく、彼の眼に見えた。
道場へ出て、礼を交わし、槍を把り合うと、静山は、こよいは約束どおり十本勝負であるぞと云って、前の二夜にもまさる程、仮借ない烈しさで立ち対って来た。
槍が軽い――。どうしたのか、泥舟は、その夜に限って、心は開け、手足心息、まったく一つに動くのであった。