Classiques japonais avec furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lisez 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 150 635 caractères · 306 écrans
八
という熱望だというのである。
捕われて、鎌倉へ送られて来たその当座にも、早速のように、舞を見せろという頼朝の下命はあったのである。――が、静は、どうしても、かぶりを振って肯かなかった。
手を焼いた前例があるし、こんどは、頼朝のいいつけも、厳重であったから、清経は、この下話には、充分周到な要意を胸に持って、彼女を説いた。
「いちどお目にかかっておけば、お怒りの度もよほど和もう。舞だに終ったなれば、老母をつれて、京へ帰るもさしつかえないとまで仰せられてある。御老母のためにも……ここ忍ぶべきところではないかな」
母のために。
そう云われると、否む言葉もなかった。また、良人の義経に対する鎌倉殿の感情が、すこしでも解けてくれたらと、静は、そうした恃みも抱いて、
「まだ、良人の生死も聞えず、別離の涙もかわかぬ今、恥かしい身を、鎌倉殿のおん前に曝すのは耐えられぬここちがしますが、あわれわが夫への、故なきお怒りが少しでも解かれたなら、どんなに欣しゅうございましょう。恥を忍んで舞に上がりましょう」
恥、怨、無念――あらゆる胸揺らを嚥んで、きっと、決意をした唇から、静は、遂にそう答えた。