Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Lisez 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 150 635 caractères · 306 écrans

Aozora Bunko

四

新介は、死闘に燃やした眸を、まだそのまま持って、容こそ、自若としていたが、

「面は上げておる。これ以上あげて、天を笑えというか。首を刎ねる際には、頸は伸ばすものと心得ておる。いらざる多言はお互いに無用であろう。はやく首を打てっ」

と、さすがに声は甲走っていた。

四

暁早い短夜。――濛々とこめる戦雲と朝霧に明けて、夜もすがら戦い通した籠城の兵に、ふたたび飢餓と、炎暑と、重い疲労が思い出された朝の一瞬。

「新介様あっ」

「若殿うっ。――若殿には、何処に」

搦手の兵たちが、大曲輪から大手の辺りまでを、血眼に、捜し合っていた。

それと同じ頃に、望楼の上では、

「敵が退いたっ。筒井勢は、いつのまにか、全軍退いて、今朝は、一兵も見あたらぬぞっ」

と、狂気して呼ばわる声もしていた。

敵が囲みを解いて、総退却したという歓びと、同時に、城主の嫡男の姿が見当らぬという憂いの声とが、黎明の一瞬に、齎されたのであった。

城外の水の手附近で、新介についていた部下は、全滅していた。生き残った者も、割腹していた。――が、新介の死骸はなかった。

「……もしや?」

父の家厳を初め、城中の者が、挙って案じていた一つの推定は、その日の午の刻になって、不幸にも、適中していたことが知れた。