Classiques japonais avec furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lisez 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 150 635 caractères · 306 écrans
――そして、湊川でおかくれ遊ばした叔父様も、みな揃うて、天子様のほうに向い、なお、残る子らには、正儀がおりまする。正秀もひかえておりまする。また、正平や朝成も成人して、御所のお護りに参りますると、おこたえ申しあげるのじゃ。そなたも席に欠けてよいものか。母に従うて来やい」
「あい」
朝成は、よく解った顔して、大きく頷いた。
「…………」
屋の内深くへ、すべての人々がみなかくれた後も、まだ解らぬ面持して見送っていたのは漆間蔵六であった。
だが、そのうちに突然、両手で顔を蔽うと、彼は声をあげて泣き出した。天を恐れ地へ詫びるように慟哭した。
そしていきなり小綱の手を固く握りしめ、
「この眼に、この眼に、わしは初めて、ほんとうの人を見た。いや神を見た、日本という国を見た。――小四郎、さッ急ごう、京都へだ」
「いやです。私は帰りません。正儀様の御旗の下に踏みとどまります」
「なにまたすぐに帰って来るのだ。妻、おまえの兄弟たち、縁者の輩、ひとりとして賊名の中に見捨ててよいものか。漆間蔵六とて、語らいあえば四、五十名の士は連れて来られよう。そのまに正儀様の御旗も、他へお移しになろうが、何処までも馳せ参ずる所存だ」