Classiques japonais avec furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lisez 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 150 635 caractères · 306 écrans
五
「不愍な者じゃ。亡き右府様になり代って、秀吉が改めて、媒酌してとらせる、生れかわった者として、山より迎え娶るがよい」
そう許しが出たのであった。
元よりそれは、本能寺の事変の際、藤孝・忠興の細川家の父子が、私情をすてて大義に拠り、秀吉の軍を援けて大功があったにも依るが、また、迦羅奢があらゆる辱めの中に、その姿のとおり清麗な女性の慎みと忍苦に耐えて来たことも、いつか人のうわさに伝わって、秀吉の心をうごかしたに違いなかった。
六
後に思えば、あの動乱のなかに、彼女の生命が保たれたのは、奇蹟のような救いであった。
やはり光秀の娘を妻としていた織田信澄は、信長の子でありながら、遂に疑われて殺された。
そのほか、叔父の係累、母方の血すじ縁類の一族、殆どみな謀殺され尽していたのである。
無事に、良人のそばへ帰って、忠興の面を見たとたんに、迦羅奢は、
「わが夫の強い愛であった」
と、山へ追われた時の良人の恐い顔を、今は神の姿であったように思い出すのであった。
忠興は、口にも出して云う。
「まったく、わしの愛が、そなたを救ったのだ。もしあの時、そなたが逸まって死になどしていたら、わしも無性に斬り死にばかり急いで、可惜、碌な功もたてず、あの折の戦場に屍を横たえていたろう。