Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Lisez 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 150 635 caractères · 306 écrans

Aozora Bunko

「今ほど幸福な時はない」

と、現在の自分を噛み味おうとしているのであった。

予感というものであろうか。その朝に限って、迦羅奢は、特にそんな気もちを抱いて、やがて、いつもの朝の如く、良人の忠興の居室へ朝の礼儀をしに行った。

すると、今し方まで、毎朝の日課として、弓を引き、兵書を読みなどしていた気配の良人が、どこにも見えなかった。

縁端を見遣ると、小姓がひとりで端坐している。

「お湯殿にお渡りか」

迦羅奢がたずねると、小姓は、

「いいえ、大殿に召されて、西曲輪へお越しになりました」

という。

西曲輪は、良人の父、幽斎細川藤孝の住居とされている所である。

「……お。そうか」

とのみで、彼女は、裳を曳いて、そのまま自分の室へもどった。そして乳母を招いて、暫し乳母の手から、乳のみ児の与一郎を膝へ取り、乳ぶさを授けていた。

二

「忠興の心は、決しておりまする。わたくしの妻へなど、小さい御不愍はおかけ下さいますな。私の妻の処置は、私へおまかせ置き願わしゅうぞんじます」

若い忠興は、胸を正して云った。

父の細川藤孝は、武人とはいえ、温順な人であった。

家は、室町幕府の名門であったし、歌学の造詣ふかく、故実典礼に詳しいことは、新興勢力の武人のなかでは、この人を措いて他にない。