Classiques japonais avec furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 104 139 caractères · 208 écrans
救いの道はたった一つ
硯箱、経机、文鎮、手筥――と手に従って削って焚きましたが、いずれも駄木で、ただキナ臭いだけの話、新しい香、佳い香と漁り抜く丈太郎は日と共に懊悩を重ぬるばかりでした。
その煩悶が重なると、やがては有名な寺や堂の、時代の付いた仏像を狙うようになります。天禀の智恵と身の軽さを利用して、江戸から近郷へかけて、有名な仏像仏具を盗んで、片っ端から削っては焚きましたが、十中八九は檜や白檀、精々浅香などですが、中には思いもよらぬ素晴らしい名香があります。
斯うして丈太郎の異常嗜好が、気違い染みた熱心さで、際限も無い罪悪の淵へ陥ち込んで行ったのです。
救いの道はたった一つ
「お園、斯うしたわけだ、金さえあれば、まさか、此処までは落ちなかったろうが――いやいや――、今となっては、金があったところで、この仏像仏具を漁る楽しみは、思い止まられそうも無い――」
「…………」
丈太郎の恐ろしい懺悔話にお園は唯打ち顫うばかり、応えようもなく男の顔を見守りました。
「信心深いお前の両親が、仏敵同様の俺にお前を添わせる筈もない、お園、こんな男を許嫁に持ったのが不仕合せとあきらめて、今のうちに身を退いてはくれまいか、いずれは知れずに済むことではない、山形屋の丈太郎が寺荒しの本人と判ってからでは、繋がるお前の一生も廃りものになる」