Classiques japonais avec furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 104 139 caractères · 208 écrans
真っ逆様に丈太郎は鼻観地獄の底へ
襖を開けると、
「あッ」
お園は思わず敷居際に崩折れました。
中は打ち砕かれた仏体が一パイ、八畳ほどの一と間が、足の踏みどころもありません。
金箔を置いたの、素木の黒ずんだの、五彩眼も綾なる、如来、地蔵、羅漢、あらゆる限りの大小種々の仏体が、惨ましくも腕を折られ、蓮座を割られ、砕かれ、削られて、上げ汐に打ち寄せられたように、混然雑然として散乱して居ります。
真っ逆様に丈太郎は鼻観地獄の底へ
万両長者の一人息子に育った丈太郎は、子供の時からいろいろの遊芸に身を打ち込みましたが、わけても香道が自慢で、こればかりは斯の道の先輩達も、若い丈太郎の前に兜を脱ぎました。
香道は足利時代から徳川時代へかけて、茶の湯生花以上に流行ったもので、三条西実隆を祖とする御家流をはじめ、志野流、建部流、米川流、蜂屋流、園流、里見流などの諸流派に岐れ、名木を焚いて聞く閑寂な楽しみに、上下の隔てなく熱中したものでした。わけても十寄合とか競べ香、香合せなどいう遊戯は、いろいろ方式があって、一時天下を風靡する有様でしたが、維新以後お家流、志野流、蜂屋流以外の諸流派は殆んど廃絶してしまって、今では玄妙不可思議な鼻観三昧の秘奥を知る人も甚だ少なくなってしまいました。