Classiques japonais avec furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 104 139 caractères · 208 écrans
切支丹屋敷へ
切支丹屋敷へ
それから又三日経ちました。お夏は毎日崇巌院の四方を徘徊しましたが、夫三十郎に逢う手蔓もなく、玄関から行けば、剣もほろろに追い返されるばかり、何べんか死のうと思い詰めましたが、其処まで行くと、最後に取り出すのは、何時でも、母親の形見の不気味な手筐でした。
「いっそ、死んだ気で、アルフオンゾ様に逢って見よう、切支丹宗門として磔柱にかけられるのは、斯うして夫のお帰りを待つよりは、まだしも楽だろう」
と思い定めたのは、夫三十郎が家出をしてから十日目でした、決心が付くと、若い女ほど強いものはありません。その夜のうちにお夏は、今までは塀の側へも寄り付かなかった、切支丹屋敷へ忍び込んでしまったのです。
若い女が切支丹屋敷へ、そんなに無造作に入れるわけは無いと思う人があるかも知れませんが、それは大変な間違いで、明暦二年というと、元和元年の切支丹大殺戮から三十年余り、天草の乱からは十年も経って居りますから、切支丹屋敷に押し籠められて居る異人は幾人も居りません。それに世の中の人が切支丹屋敷と言うと恐れて近づかないから、同心小者の警備はあっても、人の出入こそやかましく言いましたが、生垣も塀ももぐり放題、それでも誰も近づく者が無いから、結構済んで居たわけです。