Classiques japonais avec furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 104 139 caractères · 208 écrans
木偶の身の代が五百両
長次は隠れ場所から一歩踏み出しました。と、華魁人形の唇が赤々と自分を迎えて、最早踏み止まることなどは思いもよりません。若い盛りの者が、久し振りの恋人に逢うような、間をせかれた男が、無理な首尾をして、逢瀬を楽しむような、何んとも言えない不思議な恍惚に引き入れられて、夢心地に華魁人形に飛び付きました。
無生物の持つ魅惑――これは又何んと言う怪奇な恋でしょう。
長次は妻子も、年齢も忘れて、人形の誘惑の前に全身を投げ出してしまいました。その手――檜を彫って、泥絵の具を塗った筈の手は、柔かに長次の背後に廻されて、木と綿とで出来て居る筈の胸には、明かに鼓動を感じたのです。
そればかりではありません。長次の唇に感じた、人形の唇は、間違いもなく温かい人間の唇だったのです。
暫らくは、世界が其の儘太古の混沌に還ったような、妖しい夢心地が続きました。これは又、何んと言う不思議な抱擁でしょう。
が、俄然として、夢は破れました。長次の身体は強かに床の上に投げ出されて、何拠か挫いた様子、――暫らく起き上ることも出来ません。
木偶の身の代が五百両
「両国の活人形は大層な人気と聞いて、実は蔭乍ら喜んで居りましたが、あまりのなつかしさに、見ては反って悪いと思い乍ら、堪え兼ねて今日ちょいと覗いて見ますと、急に取り払われたそうで、あの華魁人形