Classiques japonais avec furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 104 139 caractères · 208 écrans
藤色の大振袖と、緋鹿の子の長襦袢と、精巧の袴と、紅綸子の夜の物と、何んという妖しい取り合せでしょう。
お春は全く気が遠くなるようでした。
桜子の美しさは、日頃見馴れておりますが、それと寄り添う若衆の美しさも、此の世の者とも思われません。
膝と手とで歩くようにして引き揚げたお春は、その足ですぐ、主人総左衛門の寝所の障子を叩きました。
「旦那様、大変で御座います」
「何んだ騒々しい」
飛び起きた総左衛門、障子を開けると、廊下にお春はガタガタ顫えて居ります。
「何うした、お春じゃないか」
「ハイ、お嬢様のお部屋に妖しい者が――」
「馬鹿な事を言え」
「いえいえ本当で御座います。芝居へ出て来る若衆のような、それはそれは美しい男で――とても人間とは思えません」
「兎に角行って見よう、あまり騒ぐな」
廊下伝い、娘桜子の部屋の外へ来て見ると、内は※として、何んの変りもありません。思い切って障子を開けると、有明の行灯に照された床の中には、娘の桜子が唯一人、いとも安らかな息づかいで眠って居るのです。
「何んだ、娘の外には誰も居ないではないか」
「ハイ」
「つまらぬ事を言いふらしてはならんぞ」