Classiques japonais avec furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lisez 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) de 小酒井 不木 (こざかいふぼく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 140 caractères · 396 écrans
「ちゃんとここにあるじゃありませんか。あんなに大袈裟に仰しゃるものだから、びっくりしてしまった」
と、車掌は私を責めるようにいった。私は一寸恥かしい思いをしたが、ふと気がつくと、車掌のつかんでいるのは、私のとは少し格好がちがって、しかも不思議なことには左の靴であった。
「車掌さん、それは僕のではないよ、第一僕のなくなった靴は右だのに、それは左の靴じゃないか」
こういわれて、こんどは車掌が変な表情をして、自分の持っている靴と、私の右の靴とを比較べて見た。
「はてな、これはおかしい、ことによると……」
この時、留守にして居た色眼鏡の人が手巾で手を拭き拭き帰って来て、車掌の姿を見るなり怪訝な顔をして立ちどまった。車掌は早くもその人の足に眼を注ぎ、
「おや、あなたは、両足とも右の靴をはいているじゃありませんか」といった。
その人はうつむいてしばらくの間足許をながめていたが、はじめて気のついたような表情をしていった。
「や、これはどうも、ついその……」
「この靴があなたのでしょう?」と車掌は手にしていた靴をその人の前に差出した。
「いかにもそれが私のです」と、その人は顔を紅くして答えた。