Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

Lisez 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) de 小酒井 不木 (こざかいふぼく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 140 caractères · 396 écrans

Aozora Bunko

猫と村正

「母危篤すぐ帰れ」という電報を受取った私は、身仕度もそこそこに、郷里名古屋に帰るべく、東京駅にかけつけて、午後八時四十分発姫路行第二十九号列車に乗りこんだ。この列車は昨今「魔の列車」と呼ばれて盗難その他の犯罪に関する事件が頻々として起り、人々の恐怖の焦点となって居て、私も頗る気味が悪かったけれど、母の突然の病気が何であるのかわからず、或は母が既に死んだのではなかろうかとも思って気が気でなく、この列車が私の利用し得る最初のものだったので、とりあえず、その三等席に陣取った訳である。

「魔の列車」とはいえ乗客はすでに東京駅で一ぱいにつまった。私の席のすぐ前の腰掛は、黒い色眼鏡をかけ、麦稈帽をかぶって、洋服に夏マントを着た四十格好の人によって占領されたが、その顔が非常に蒼ざめていて、いわば人相がよくなかったので、私は時節柄一寸、気味の悪い思いをした。然し、靴をぬいで腰掛の上に坐り、車窓にもたれて眼をとじると、いつの間にか、人相の悪い人のことなど忘れてしまって、頭は母のことで一ぱいになった。

いつもならば、私は列車の響に眠気を催すのであるが、今夜はなかなか眠られそうになかった。