Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

Lisez 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) de 小酒井 不木 (こざかいふぼく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 140 caractères · 396 écrans

Aozora Bunko

「もう、それには及びませんよ。いやどうも失礼しました」

こういって車掌は靴を置いて、逃げるようにして去った。しかしその人は別に怒った顔もせず、再び私の前に腰掛けていった。

「あなたのを間違えたのでしょうか、大変失礼しました。何しろ不具ものですから、どうか御ゆるしを……」

「どう致しまして」と、私はあわてて制していった。「さぞ御不自由で御座いましょう。とんだ御心配かけまして却て恐縮です」

それから私が手洗をすまして帰って来ると、その人は棚の上の信玄袋から、梨と小刀を取り出し私にもすすめた。私はその好意を謝し、内心では、それまでその人の人相のよくないことに疑惑を抱いたことを恥じて、遠慮なく、御馳走になった。母や妻子のことで一ぱいになっていた頭に、この時はじめて余裕を生じ、それと同時に、私はその人に対して一種の興味を感じはじめた。というのは、私は、いわば直感的にその人が何か深い因縁で、不具者になったように思えたからである。

「どちらまで、御越しで御座いますか」とその人は私に向ってたずねた。

「母が危篤だという電報を受取ったので、名古屋まで帰るところです」

「そうですか。