Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

Lisez 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) de 小酒井 不木 (こざかいふぼく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 140 caractères · 396 écrans

Aozora Bunko

学説が右なり左なりへはっきりと片がついて居れば、それに従って治療もはっきり行い得る筈ですけれど、何分学説が論争の中途にあるのですから、治療も当然半端ならざるを得ません。数多い病気のうち、薬剤を以て特効的に治療し得るものは片手の指を屈し尽すに至らぬほどの少数で、その他は、ただ、いわば気休めに薬剤を与えて自然に治療するのを待つに過ぎません。そうして、いざ生命が危篤になると、どうです、どの病気にも御承知のとおりカンフル注射を行うことになって居ます。日本だけで一年に百何十万という人が死にますが、その大部分は、カンフルを御土産として、あの世に参ります。このカンフルは申すまでもなく強心剤即ち心臓の働きを強くさせる薬剤ですから、つまり医学の究極は心臓を強くさせることだということが出来る訳です。急性病にしろ、慢性病にしろ、若し心臓さえ変らぬ力で働いて居たならば、治る病気は治り、治らぬ病気は治らぬままに生命を存続することが出来ます。ペストやコレラのような恐ろしい病気も、つまりは最後に心臓が犯されて死ぬに過ぎませんから、医学者たるものは須らく、ペストやコレラの病原菌穿鑿に力をそそぐよりも心臓を鉄の如く強くすること、否、一歩進んで鋼鉄製の人工心臓の製作に工夫をこらすべきであります。